看護師2年目の頃、私はあるご夫婦と出会いました。旦那さんは脳梗塞で入院し、阪神麻痺が残りました。奥様はその間に不整脈の精査で同じ病院に入院されましたが、検査は問題なく退院されました。旦那さんは急性期を脱し、リハビリ病院へ転院。そこで再びご夫婦に出会ったのです。
旦那さんはリハビリの真っ最中でした。奥様は私の隣に座り、話し始めました。
奥様が語ってくれた本音
「私ね、夫が病気になる前は。夫が車を運転してくれて買い物行ったり、旅行に行ったりしてたの。でも夫が病気になって、旅行に行けなくなった。買い物も自転車で行くようになって本当に惨めで嫌だった。なんでこんな目に合うんだろう。そう思ったのよ。」
「でもね、自分も入院して初めてわかったの。今こうして夫と暮らしていることが、どれだけ幸せかって。だからね、自転車で買い物行くのも苦じゃなくなったの。あぜ道に咲く花も綺麗だと思えるようになったのよ。」
若かった私に話してくれたことの意味
その話を聞いた時、とても感動しました。人生経験が少ない私に、奥様は自分の苦しみ、弱さ、そして今感じている幸せも全部そのまま話してくれました。何故、私にお話してくれたのかわかりません。でも心から「看護師になってよかった」そう思えた瞬間でした。何十年も経っていますが忘れた事はありません。
私の人生の学び
あの日の奥様とのエピソードは、私の学びです。人は、病気なってから、失ってから初めて当たり前の幸せに気づく。奥様がどれだけ苦しい思いをしてきたのか想像もつきません。でも、二人が生きていてこうして今、暮らせている幸せに気がついた。私はまだ23歳でしたが、こんな素敵なお話をしてもらえて本当に幸せだと思いました。看護師でないと経験できない事だと思っています。心から看護師になってよかったと思いました。今でもそう思っています。苦しみの中でも、人はまた幸せを見つけられる。その気付きに寄り添える仕事をしているんだと、あの時教えてもらったのです。